原発リスクの不在と電力の安定供給

原発リスクの不在と電力の安定供給

沖縄は日本で唯一原発リスクのない県として、東日本大震災以降、注目を集めるようになりました。沖縄はこれまで「エネルギー不毛地帯」と言われてきました。それは原子力発電に頼らないエネルギーを利用していたため、電力コストが比較的高く、製造業等の立地には向かないとされていたからです。しかし、福島の原子力発電所の事故以来、この状況は一変しました。全国の原発が停止し、日本各地で電力不足が深刻化して、産業インフラが不安定な状況に陥ったからです。原子力エネルギーに頼らず、電力を安定的に供給し続けることができる沖縄県に、県外から多くの製造業工場の移転が進んでいます。

また沖縄県外の各電力会社が原発の廃炉や最終処理のコストを電気料金に転嫁せざるを得ないため、沖縄の電気料金の割高感も薄らいできました(下記、電気料比較参照)。

電気料金比較

大阪 沖縄 名古屋 横浜
業務用 月額基本料 1,323円 1,926円 1,780円 1,732円
1kWhあたり料金 夏季:12.6円
その他季:11..5円
夏季:13.6円
下記以外:12.4円
9.3円-12.9円 個別契約により算出方法が異なる。
一般用 月額基本料 320円 383円 243円~1638円 819円
1kWhあたり料金 19~26円 21円~29円 17円~22円 18円~29円

調査期間:2012年12月~2013年1月   出所:JETRO 投資コスト比較

確かに沖縄の電気料金はまだ比較的割高ですが、「原発ゼロ」は、「日本で唯一、エネルギー問題が存在しない土地」という価値を生み出しました。震災後は、データーのバックアップを急ぐ県外の企業や官公庁から、節電や計画停電の恐れのない沖縄なら、電力不足による工場の操業ストップの恐れや、データー損失の心配がないと、沖縄の行政機関に問い合わせが殺到したといいます。沖縄への企業誘致にも変化の兆しが表れており、「半径100キロ以内に原発がないこと」を条件にするなどで、沖縄進出を決める企業もあります。

 

原発なき世界の最先端

更に沖縄電力では、宮古島において「メガソーラー実証研究」を進めてきます。広大な敷地に敷き詰められた2万枚を超える太陽光パネルと2基の風力発電機を備えたこの施設が発電するエネルギーは、島内で消費される電力の最大で16%。太陽光と風力を合わせた再生可能エネルギーの比率は全国で3%程度の中で、きわめて高い比率を占めています。沖縄電力は現在、宮古島で蓄積した実証データをもとに県内全域で再生可能エネルギーを導入するための実験に着手しており、2012年3月には沖縄本島北部に1000キロワットのメガソーラー施設を稼働させています。このプロジェクトが進み本格的に再生可能エネルギーの導入が実現すれば、沖縄と全国各地の電気料金格差は更に解消に向かうことでしょう。

かつて「エネルギー不毛地帯」と言われていた沖縄は、日本で唯一原子力発電に頼らなかったことで、もはや電力供給という「産業インフラ」の面においても優位な立場に立ちつつあるのです。

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子供を持つスタッフへのインセンティブ

原発の無い沖縄への事業所の立地は、そこで働くスタッフにとっても有利な条件となり得ます。特に幼い子供を抱えるスタッフにとって、原発とも放射線とも関係の無い沖縄への生活は、魅力的な選択肢です。比較的割高な電気料金に関する不満も、他の生活コストの低さである程度吸収することができるでしょう。何より、子供を放射線の危険から遠ざけられる安心感は、県外から沖縄にスタッフを移住させる場合に、大きなインセンティブになります。実際に、子供への放射線の影響を心配して沖縄に移住する労働者が急増していますが、沖縄では彼らの受け皿となる雇用がまだ十分に拡大していないというのが現状です。よって条件等が折り合えば、県外から移住を希望する優秀なスタッフを有利な条件で長期的に採用することも可能でしょう。